第31話 初めてのお遍路旅(四国霊場88ヶ所巡り)
僕が初めて 四国遍路のお遍路さんになったのは、小学校3年生の時(今から40年以上も前)です。
僕の姉がなくなりました。僕の両親は もう悲しんでばかりの日々で みんなとてもつらくって 親しい親類が 心配して泊まり込んで 励ましてくれていました。家庭が もうすっかり暗くなってしまいました。
それがきっかけで うちの家族は 姉のお位牌(いはい)をもって 四国88か所巡りの旅に出ることになりました。
父も働き 僕も小学校へ通いながらですので 主に土曜日から日曜日・祝日を使って 少しづつ 少しづつ巡る お遍路旅をいたしました。
姉のお位牌と一緒にお遍路旅をすることで 姉の供養にもなり 姉もまだ家族と一緒に いるような気持ちになれました。
「お寺に着いたよ。」とお寺に着くたびに 母は 姉のお位牌に声を掛けていました。僕も 姿は見えないけど 姉と一緒にいるような気持ちで なぜか家にいる時のような悲しみを あまり感じませんでした。姉も一緒に車に乗って旅をしている そんな気がしていたからです。
この時のお遍路旅は 今から40年以上も昔の時代で、無理して買った中古の自家用車で行ったのですが、とてもポンコツの車で 突然動かなくなったり、突然クラクションが鳴りっぱなしになったり、ヘッドライトが突然消えて 助手席に乗った僕が手持ちの懐中電灯を持って 前方を照らしながら 夜の山道を照らしながら走ったり、また当時の遍路道は 泥道も多くって 山道でよく水たまりのぬかるみにタイヤが入って出られなくなってしまって みんなで 夢中になって車を押したりする事は しょっちゅうでした。みんな顔を泥だらけにして おかしくなって 笑ったりもしました。
また 簡単な地図しかなかったので お寺のいく先行く先で道に迷い 土地の人に教えてもらいながらお参りいたしました。
今思いますと、そんな数々の お遍路旅のトラブルが みんなの心から悲しみを 徐々に忘れさせてくれていたのかもしれません。
家族での旅ですので 小学生の頃の僕は 行く先行く先の見知らぬ土地の見る風景や 家族と一緒に雑談出来る事が楽しくて 週末のお遍路旅が とても楽しみに感じていました。
でもやっぱり、時折 悲しみも襲ってきます。特に 父の言動には 参りました、突然思いつめたように、父が「皆で 姉ちゃんの所に行くか?」と 言い出したりします。すると 母は黙って 目に涙しています。そのたびに僕が、「パパ おしっこ! おしっこ~っ!!!。」と言って 車を無理やり止めさせて おしっこをするふりをして 家族の気分を変えようと努めていたのを 覚えております。小学生ながら 頑張っていたんですね。
僕の初めての遍路旅は こんな風な具合でした。
そんな事もございましてか、お遍路旅に親しみを感じたり 時にふと思い出したりして感謝したり また今でも心の支えになっていたりして 大切に感じております。
納経帳 四国霊場八十八ヶ所 ビニールカバー付 線描画入り 大サイズ 赤