第17話 「朝のお写経部屋」
この日は 朝からお天気に恵まれ、山のお寺のお写経部屋の向こうでは 障子越しに 朝日が差し込んで、まぶしくって少し目を細めました。光は畳にも反射して部屋をわずかに照らしています。まぶしく輝く障子には 庭の木々と この部屋の屋根の影が 濃く映り込んでいます。
外の景色を見ながら お写経をしたく思いましたので、もう一方の障子を開け放って 外からの新鮮な山の空気を部屋に入れました。そして お写経部屋の真ん前にあります仏様に ロウソクとお線香に火をつけ、「今日もお写経させていただきありがとうございます。」そうつぶやいて お写経机の座布団の上に正座しました。
僕は いつもお写経部屋の外が一番よく見える席に座ります。指定席です。ここから見る外の景色は とてもきれいで 静かで 心が落ち着いてまいります。このまま畳に横になってしまいたくなりますが、お写経に来ておりますので 気持ちを控えて 硯に 朝の水を少し入れまして墨をすっていきました。
この日も すぐに墨のいい香りがしました。この墨をする作業と 墨の香りが好きですので 手間ですが いつもこのようにして筆で お写経をしてまいります。墨が出来たら もう一度手を合わせまして 「お写経させていただきます」と心で唱えて 置いてあった筆を持ち 「般若心経」を書いていきました。
ここでお写経をさせていただけることに この日も感謝して ゆっくりと書いていきました。
古梅園 写経墨 0.7丁
五ツ星 紅花墨 【古梅園 1丁型 漢字・仮名・写経 黒~茶系 菜種油煙】Oil soot ink